出雲大社「大しめ縄」8年ぶりの架け替え!飯南町制作現場レポート【2026年版】
2026年09月11日 公開

2026年7月21日(火)、出雲大社神楽殿の「大しめ縄」が8年ぶりに架け替えられ、奉納されました。全長13.5メートル・重量4.7トンを誇る国内最大級の大しめ縄。その制作から架け替えまでには、多くの人の手と、飯南町で長く受け継がれてきた技術が結集しています。
制作を担う「飯南町大しめなわ創作館」

出雲大社神楽殿の大しめ縄をはじめ、全国各地から依頼を受けたしめ縄を制作しているのが、島根県飯南町にある「飯南町大しめなわ創作館」。地域に息づく伝統文化と歴史を発信するこの施設では、今も職人の手によって一つひとつのしめ縄が丁寧に作られています。
制作現場の飯南町と奉納の地である出雲大社。新しく架け替えられた大しめ縄を出雲大社で見た後は、そのルーツを訪ねて飯南町まで足を延ばしてみませんか。
飯南町で受け継がれる、出雲大社神楽殿の大しめ縄づくり
出雲大社神楽殿の大しめ縄は、飯南町で育まれてきたワラ細工の技術によって作られています。雪深い飯南町では、農作業が難しくなる冬場の手仕事としてワラを使ったものづくりが盛んに行われ、その技術がしめ縄づくりへとつながっていきました。

飯南町と出雲大社の大しめ縄との関わりは、昭和30年代までさかのぼります。現在の神楽殿が完成した昭和56年(1981年)、その規模に見合う巨大なしめ縄が求められ、地域の人々が制作に立ち上がりました。その技術と活動は、地域の生業として飯南町注連縄企業組合へと引き継がれ、今も大切に守られています。
2026年に奉納された大しめ縄は、昭和56年の1本目から数えて8本目にあたります。前年の田植えから始まり、稲ワラの収穫、選別を経て中芯や菰(コモ)の製作に至るまで、機械に頼らない手作業ゆえに完成までは1年以上の歳月がかかります。
ここからは、大しめ縄がどのように形になっていくのか、その工程をたどっていきます。
出雲大社の大しめ縄ができるまで

「御田植神事」の様子

しめ縄専用の水田から刈り取られる「赤穂餅」の稲
大しめ縄作りは、翌年の架け替えに向けた「御田植神事」から始まります。材料となる稲の健やかな成長を祈願して田植えを行います。しめ縄専用のワラとして「赤穂餅」「亀治」を栽培。成長すると人の背丈ほどの高さになり、稲穂が実る前の真夏に刈り取って乾燥させます。
また、飯南町は標高約500メートルの高原地帯。昼夜の寒暖差が大きい環境の中で育った稲ワラは、強くしなやか。2026年の大しめ縄に使われた稲ワラも専用に栽培され、その面積は約1ヘクタールに及びます。
大しめ縄を支える樹齢90年の「吊り木」

樹齢約90年、高さ30メートルの檜から切り出された吊り木
しめ縄を吊るす「吊り木」には、飯南町産の檜を使用します。重量4.7トンもの大しめ縄を支えるため、直径50cmほどある、木質に粘りがあり、強度に優れた木が選ばれました。
しめ縄の土台となる、大縄の「中芯」づくり
2026年春、「飯南町大しめなわ創作館」では大しめ縄の制作が本格化していきました。1本作るのに1カ月以上かかる大縄の中芯には、しめ縄専用の稲ワラに加え、飯南町産のコシヒカリのハデ干しワラも使用します。

強度を高めるため、束ね方や締め具合には技と経験が活かされます
まずはワラを束ね、直径30センチほどの長い束を何本も作るところからスタート。次に、麻ロープが入ったワラ束を中心にして、その周りへさらにワラ束を重ねていきます。1束ずつ固く締めながら徐々に太くし、大しめ縄の元となる巨大な中芯を2本制作。仕上がりを左右する大切な工程です。

中芯を包む、菰づくり(左)、巨大な中芯を2本制作(右)
中芯を包み美しく力強い縄にする「菰(コモ)」
中芯を包むために編まれる菰(コモ)は、幅3.6メートルにもなる大きなもの。色艶の美しい良質なワラを選び、代々受け継がれてきた技術で丁寧に編み込んでいきます。大しめ縄の表面を飾る部分だけに、美しい仕上がりが求められる工程です。

菰編み(左)と菰つなぎ(右)
職人の技が光る「〆の子(しめのこ)」
大しめ縄に取り付ける円錐形の「〆の子」も、職人の手によって一つずつ制作します。巨大な大しめ縄に合わせた〆の子は、人の背丈ほどもある大きさで、3つ取り付けます。形ひとつをとっても、完成した大しめ縄全体の造形美を左右する重要な存在。

1つの〆の子に使われる藁の量はおよそ1000平米分
諸説ありますが、この〆の子は米づくりに欠かせない「雨」の象徴ともいわれています。出雲大社神楽殿の大しめ縄が持つ優美な姿は、こうした細部への配慮と、職人の経験・技によって生み出されているのです。
大詰めを迎える出雲大社の大しめ縄作り
2026年6月には、中芯や菰、〆の子など各部の制作が進み、館内には巨大なしめ縄の姿が少しずつ現れ始めました。その後、菰掛けを経て、7月20日の「大撚り合わせ」、翌21日の「架け替え・奉納」へ。大しめ縄づくりは、いよいよ最終段階を迎えます。
縄を美しく仕上げる「飾り縄」
「大しめ縄」と「吊り木」を固定するロープを隠し、見栄えを良くするために取り付けられる「飾り縄」。飾りといっても直径8センチほどもある立派なワラ縄で、全部で12本を用意します。

飾り縄の一部
中芯を包み込む「菰(コモ)掛け」
菰と中芯ができあがると、次は中芯を菰で包み込む「菰掛け」の工程へ。2026年6月20日には作業の一部が特別に一般公開され、広島を中心に関東などから訪れたツアー参加者34名も制作に加わりました。

幅3.6メートルの菰を広げ、職人の掛け声に合わせて中芯をゆっくりと転がしながら包んでいきます。ワラの乾いた匂いが工房いっぱいに広がる中、菰や中芯を傷めないよう手を添える位置にも細心の注意が必要な、慎重な作業。職人と参加者が息を合わせながら進め、巨大な大縄が姿を現しました。
一度きりの勝負どころ「大撚り合わせ」
2026年7月20日(月・祝)、「飯南町大しめなわ創作館」で制作工程最大の山場、「大撚り合わせ」が行われました。2本の大縄の元を支柱に固定し、クレーンで持ち上げながら、人の力も合わせて少しずつ撚り合わせていきます。
この撚り合わせによって、出雲大社神楽殿の大しめ縄は「左元右撚り」の形に仕上げられます。大縄は1本だけでも1トンを超える重さ。わずかなずれが仕上がりを左右する、一発勝負ともいえる工程です。
※当初は7月18日を予定していましたが、雨天のため2日順延しての実施です。


この日は約80名が参加し、そのうち約40名が作業を担当。大撚り合わせには午前中から約4時間を要し、午後からは完成した大縄を吊り木へ固定する作業へ進みました。多くの人が見守る中、緊張と熱気が入り混じりながら、翌日の架け替えへ向けた準備が続けられました。

いよいよ、架け替えから奉納へ

2026年7月21日(火)、完成した大しめ縄は朝早く飯南町を出発し、出雲大社神楽殿へと向かいました。そのころ出雲大社では、長年神楽殿に掲げられてきた大しめ縄の取り外し作業が着々と進められていました。
午後になると、いよいよ新しい大しめ縄の取り付け作業が開始。現地で〆の子を取り付けた大しめ縄に、飾り縄を一本ずつ丁寧に取り付けていきます。全体の形を整えながら、クレーンで慎重に神楽殿の梁へと架けていきました。この日の架け替えには、飯南町注連縄企業組合をはじめ、飯南町や観光協会など約40名の関係者が参加。重機を扱うスタッフとも緊密に連携しながら、工程を確認しながら作業を進めました。


前回の架け替えから8年が経ち、今回初めてこの大仕事に臨む若い職人や関係者も多く参加しました。厳しい暑さの中、作業は丁寧に進められ、19時30分、8本目となる大しめ縄の架け替えが無事完了しました。すべての作業を終えると、見守っていた関係者や観光客から自然と拍手が起こりました。

作業を終えた関係者からは、無事にやり遂げた安堵と達成感、そして現地やSNSを通じて寄せられた声援への感謝の言葉が聞かれました。一方で、すでに次の架け替えを見据え、「さらに美しいしめ縄を奉納したい」という思いも。8年ぶりの大仕事は、飯南町で培われてきた技術と思いを、次の世代へつなぐ節目にもなりました。
◎制作過程を動画で見る
動画:飯南町まちづくり推進課
しめ縄文化にふれる「飯南町大しめなわ創作館」へ

「飯南町大しめなわ創作館」は、出雲大社から南へ車で約1時間、豊かな自然に囲まれた山あいの飯南町にあります。館内では、全国の神社などから依頼を受けたしめ縄の制作工房を見学できるほか、日本最大級の大しめ縄の制作工程や奉納風景を紹介する展示も見ることができます。
大しめ縄の制作期間中は休止していた「しめ飾り作り体験」と「とろへい(わら馬)作り体験」も、現在は体験いただけます。職人に教わりながら、飯南町に受け継がれるワラ細工の文化に、実際にふれてみてはいかがでしょうか。
※体験は予約制です。詳しくは公式ホームページをご確認ください。
飯南町 大しめなわ創作館
〒690-3206 島根県飯石郡飯南町花栗54-2[MAP]
TEL:0854-72-1017
【営業時間】10:00~17:00
【入館料】無料
【休館日】毎週火曜日、年末年始
【交通アクセス】吉田・掛合ICから車で約30分/松江玉造ICから車で約1時間10分(※「道の駅頓原」に隣接)
※しめ飾り作り体験・とろへい(わら馬)作り体験は完全予約制です。
体験内容・料金・予約方法等は公式ホームページをご確認ください。
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